UNISON SQUARE GARDENは”日常”を忘れない/「instant EGOIST」と「23:25」から見る日常へのまなざし
Allyと申します。
音楽も映画も小説も、物語性のあるものとか言葉が大好き。
そんな私ですが、UNISON SQUARE GARDENはもはや敬愛の域にあります。メロディが良い、曲が良い、いろいろあるけれど、彼らの価値観というかスタンスに惚れ込んでいる。
ユニゾンの初ライブは、Cather in the Spyでした。音源を聴いてハマった「23:25」が聴けたら最高だなぁ・・・って思っていたら本当にやってくれて、その時の感激は言葉にできないものでした。
音楽を聴きに来たはずなのに、音も時間も置き去りにして、ライトに照らされる3人の姿が焼き付いて離れなくなった。それくらいに。
前置きが長いのは、文学野郎だからなので、ここから本題。
UNISON SQUARE GARDENは、”日常”を忘れないバンドだと思う。
それは、彼らを含めた我々全員の日常。この点について、「23:25」と「instant EGOIST」から整理したいと思う。長いけど読んでくれたらうれしい。
- 1日の終わりと、今日の夢/23:25
- 日常生活と音楽の関係/instant EGOIST
- ロックバンドは優しい/「ロックバンドは正しくない」
1.1日の終わりと、今日の夢/23:25
曲名の由来そのものはさておき、テキスト(歌詞)から考える。「23:25」をどう読む?調べたところによると23時25分らしい。つまり夜、日付をまたぐ35分前。「お天気リポーター偶像にとん挫した」って歌詞もあるし、深夜のニュース番組を見ている様子も想像できる。
1番も2番もサビまでは、日常の不透明さ、理不尽さ、そういうものに振り回されている様子が描かれる。でも、サビ前で
彩られては花盛り 少しあっては雨ふらし
続いてんだよ わかんねぇかな
と、織り込む。ここで、日常は晴れの日もあれば雨の日もあるんだよ、と諭している。
サビの歌詞をみると、出来事の整合性がないこと、夢想的なことを書いていること、そして「あさきゆめみし」から、夢の世界であることを思わせる。
眠りにつき、今日も明日も「帰ろう世界へ」。世界=日常生活なのかな。夢の世界、とも解釈できるけれど、ユニゾン的には現実のルーティンへ戻ることだと思う。
でも、突き放すことなく、眠りの世界で回復し、いろいろあるよな、頑張ろうぜ、って言ってくれているんじゃないかな。
2.日常生活と音楽の関係/instant EGOIST
ユニゾンは、「ロックだけ聴いてりゃいいんだよ」って言わない。生活ってものがあるって知っている。仕事行って、いいことも悪いこともあって、家事をして、頑張る局面はたくさんある。ルーチンワーカーの日常を皮肉ってみたのが「天国と地獄」なら、救いの一手は「instant EGOIST」だ。
窮屈な電車に押しつぶされるのは本当に衣服だけなのか
頭が下がる/退屈な街と生きていくルールブック/どいつもこいつもみぎならえ/。労働者…って感じの歌詞が並ぶ。毎日働いている様子が目に浮かぶ歌詞だ。でも、これは風刺の歌じゃなくて救いの歌なのだ。
ルールブックに沿えない部分を認め、どうにも気持ちが乗らないことは、全部引き受けなくてもいいんだよ、という歌詞が、
偏屈で不気味なぐらいの風模様 どいつもこいつも右ならえ
「さあ手を叩こう」?気持ちがどうも乗らないなら
地蔵さん、そんくらいは、許されて?
そのあとに続く、首を振るとか、腰を叩くとか、凝り固まった筋肉をほぐしてグーっと伸びてる様が目に浮かびませんか?
繰り返しでてくる言葉が、「ストップモーション」。
ストップモーション この時間 そう 君のなすがまま
忙しい人生の隙間で いやになるたびに 呼び出しボタン押していいから
せいぜい明日もがんばって!
「君」つまりこの曲を聴いている「私」。呼び出しボタンは音楽プレーヤーの再生ボタン。この曲が鳴っているあいだは、君の心を解き放てるように音楽がそこにあるのだ、とそういうメッセージかな。
これだけ周りに人がたくさんいるけれど、イヤフォンをして、音楽で耳をふさいでいる間は君は一人だ。一人でいる大義名分になる。ちょっと「センチメンタルピリオド」にも掠るテーマだな。
3.ロックバンドはやさしい/「ロックバンドは正しくない」
「23:25」のイントロが「instant EGOIST」に隠れていることはファンの良く知るところですが、「23:25」の曲名の由来のヒントがここに隠されている以上に、繋がりがある曲だと思います。
日常を生きる、鬱屈や、うまくいかないことにぶつかりながらも生きる人への優しいまなざしの歌という意味がある。
ユニゾンの新譜「Catch up,latency」のCD帯は「ロックバンドは、正しくない」。無理のないやさしさと、できる限りの誠実さで、音楽を挟んで私たちリスナーとユニゾンは向かい合っている。
正しさを振りかざすことは正しくない。優しくもない。そんなユニゾンのまなざしが、今までの曲にも、今回の新譜にも表れている。
次は「Catch up ,latency」で、ユニゾンの提示する優しさを書きたいと思う。
これは全世界に向けて書かれた、一個人の感想である。届いてるのかわからないし、しかも長い。でも、読んでくれたらうれしい。ここまで来てくれてありがとう。